占領下における社団法人日本動物愛護協会の成立

著:春藤 献一
出版:国際日本文化研究センター 日本研究 第57巻

動物愛護という言葉が生まれた背景だけでなく、未だに日本において「動物福祉」が浸透しない要因や、動物の命・戦争と平和・社会教育の関係性について、当時の人々の社会運動の変遷から気づくことのできる研究文です。

戦後、民主主義を浸透させるうえで、戦時中の玉砕や特攻隊、占領地下における現地住民への支配体制など、個人の「いのち」への軽視が見られた日本の風潮を変える必要を感じたGHQが、社会教育を通して温かな住みよい人間社会をつくりあげる基礎”として、「身近なひと以外の動物を愛する心も、愛し、いとおしむ心に二つはない。動物を愛する心をもち、その行動をとることで、子どももそれを実行して幸福を感じうる」として、福祉普及の前に愛護精神の普及をしようと試みていた・・・昭和22年の児童愛護法・児童相談所開設など、戦争孤児が多く、大戦の傷跡が残る日本の当時を彷彿とさせる内容です。